頚部の放射線性潰瘍(男性64歳、右舌癌)、仙骨部褥瘡性潰瘍(70歳男性、脳梗塞、II型糖尿病)、下肢熱傷潰瘍(28歳男性)に対して乳歯幹細胞由来の培養上清治療が行われました。
治療法は、症例1と3の潰瘍部の感染組織を除去したあと、抗生剤で洗浄し、培養上清をフィブリン糊を基材として患部に貼付しました。写真はいずれも治療終了後1か月後のものです。なお大きな潰瘍(症例3)では自家表皮細胞移植を併用しました。
右舌癌の頚部リンパ節転移の頚部廓清と術後の放射線治療(60Gy)によって創部治癒不全・潰瘍化しました。
SHEDCMとフィブリン糊の塗布によって2週で創が閉鎖しました。 写真は治療後6ヶ月。
脳梗塞後遺症による運動障害によって体位変換が不可能になり、仙骨部に潰瘍が発現しました。
アタック3週後の感染肉芽組織の除去時に皮膚片を採取、表皮細胞を培養しました。
SHEDCMの懸濁液と混和し潰瘍に塗布することで上皮化を果たしました。
溶鉱炉事故による右足の重度熱傷に対して保存療法を行ったが、中央部が潰瘍化しました。
SHEDCMの塗布で4週で自然治癒しました。
難治性潰瘍に対するするサイトカイン療法としてフィブラスト®(βFGF)があります。250μgと500μgのバイアルがあり溶媒とともに潰瘍部に塗布する使用法です。
一方、SHEDCMの主要成分にはFGFは含まれていません。われわれの行った分析では、SHEDCMの中には、創傷治癒に関連のあるサイトカインとしては、IGF, VEGF、HGFがそれぞれ、1300 pg,500 pg、20 pg程度検出されています。
1マイクログラム(μ)は1000,000ピコグラム(p)に相当しますのでSHEDCMにはきわめて微量のサイトカインしか含まれていないことになります。
それにもかかわらず、ここでご紹介した臨床研究の結果のように、培養上清治療は既存のサイトカイン療法に匹敵または大きく上回ります。
なぜでしょうか。
その理由は、SHEDCMには2000をこえる微量のサイトカインが含まれていてそれらの複合作用によって組織を再生させるという、「自然治癒」に極めて近い作用があるからです。このようなコンセプトは他に存在しません。
わずかに類似のものとしては動物の胎盤を活用したプラセンタ療法や薬草などをつかう漢方療法があるにすぎません。しかしこれらは自然素材の再利用であり、培養上清のように培養操作で増産できるわけではありません。その意味でも培養上清治療の特異性が際立ちます。
1種類のサイトカインで組織を再生するのは不可能であることをわれわれは理解しなくてはなりません。
培養上清はまさに「自然がもたらした天然薬」といえるでしょう。
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